何か違う・・
そう思った瞬間、マリのいつもの鳴き声が泣き叫ぶ声となっていた。
威嚇ともとれるくらいの強い鳴き方だった。
病室の鉄格子を開けて、「マリちゃん」と何度も呼んだ。
部屋の端っこに居たマリは、怒っているようである。
何度も名前を呼びながら、撫でていてもその強い泣き叫ぶような声は収まらなかった。
足が短くなっている・・
何か違うと見たその足は、確かに足首から先が無くて包帯で包むように巻かれていた。
どうしたの!
なぜ・・?
また今日も泣いてしまった。
いつになったら、私の涙は止まるのだろう・・
マリがいつもなら直ぐに近付いてくるのに、今日は近付いてこない・・ そう言うことだったのか。
鳴き声も、私を見る目も違っていた。
恐怖と痛みで、精一杯の力を振り絞り怒っていたのだ。
そう、病院に連れてきた頃の威嚇の声だ。
暫く撫で続けていると、マリは切断された足をつきながら近くに寄ってきた。
外へ逃げようとしている。
必死になって、力一杯外に逃げ出そうとした。
怖いんだね・・
ここが、怖いんだよね・・
何されるか分らないものね・・(涙
優しく撫でながら名前を呼んでいると、落ち着きはじめてきた。
いつもの鳴き声になってきた。
それでも、私の体、手にぴったりと着いて離れない。
撫でるのを少しでも止めれば、また強く鳴き出した。
私もどうにか鉄格子の近くに体を寄せて、マリに体温が少しでも伝わるようにしていた。
そうすることで、マリが安心するのが分ったからだ。
立っているのが辛くなって、座りながらマリを撫でようとすると、また不安がった。
今日も、午前中の最後まで病院にいました。
寝始めたのを確認して、マリにお別れをしてきました。
院長のオペが終わるのを待って、説明を求めました。
「切っちゃいました。」
「皮が付いているだけで動かない状態ですから、今朝切っちゃっいました。」
切っちゃった・・って。 そんな・・
現在、左足首の先は断脚をした状態で、それでも足を着こうとするので将来的には根本から断脚をするそうです。
それは聞いていたけれど、何段階にも渡って痛い思いをさせるのは有効なのだろうか。
骨折はしているものの、足は腐ってはおらず生きているような話もしていた。
それでも、断脚をするという。
人間なら切る部分を少なくする、しかし動物は多く切るそうだ。
どうしても、地面に着く切った先の皮が破れるからだそうだ。
そして、大体は落ち着いてきた状態であることを院長は話されていた。
院長先生も、ホントによく生きていますよ・・と感心?の声も上がったくらいマリは重傷だった。
現在のところ、背中も腐った皮の部分と生きている皮の部分が見た目的にも分れてきているそうなので、腐った部分は切り取って生きた部分と何かで(専門用語だった)選択していくようになるそうだ。
いずれにしろ、私には何もできない、この先生にしか頼ることはできないのだ。
この病院は市内で最も大きく、器具も備わっている。
腕も良いと評判は至る所で耳にする。
わざわざ遠くからこの病院へ来る患者もいるくらいだ。
この辺りで、これ以上の良い病院を私は知らない。
先生にお願いするしかない。
「よろしくお願いします。」と頭を下げてきた。
いつも返事が遅くなってしまって、本当にごめんなさい。
今回マリの断脚に関して、自分のことのように悲しんでくださったこと、怒ってくださったことを深く感謝いたしております。
私が初めてその足の様を見た時は、信じられない気持ちとマリに申し訳ない気持ちで涙が止まりませんでした。
そして、それが怒りに変わるのも直ぐのことでした。
しかし、私の目の前の小さなマリを見ていたら、マリのことを優しく撫でて安心させることが最優先でした。
院長先生に説明を求めた時も、どの方法でマリを守ってあげたらいいのか分らない状態でした。
マリの治療にはたくさんの時間が掛かることになります。
この感染症との闘いは、マリと私と院長先生の強力態勢で臨まなければならないと思っております。
そのためにも、話す機会をもう少し増やす努力をしていかなければならないことを気付かされました。
マリの飼い主として自信を失い掛けたりもしましたが、そんなこと言ってられません!
マリはあの病室で、いつでも待っていてくれるのだから・・